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個人情報保護を考慮した安全なAIツールの使い方
学生の作文をChatGPTに入力してフィードバックをもらったり、保護者との面談内容をAIに入力して分析したりする教師が増えています。便利ではありますが、一つの重要な疑問が伴います。「この情報はどこへ行くのだろう?」個人情報保護法と学校内の情報セキュリティポリシーは、AIツールの使用にもそのまま適用されます。うっかり入力した学生の名前一つが、法的問題につながることもあります。この記事では、教育現場でAIを安全に、そして効果的に使うための実用的な原則をまとめました。
目次
- 教育現場における個人情報とは何か
- AIツールのデータ処理方式を理解する
- 安全な使用のための5つの原則
- ツール別の個人情報設定の確認方法
- 学生と教職員のためのAI使用ガイドライン
教育現場における個人情報とは何か
保護対象となる個人情報の範囲
学校環境でAIに入力してはならない個人情報は、思いのほか広い範囲に及びます。
学生に関する個人情報:
- 氏名、学籍番号、生年月日
- 家庭環境、家族構成、経済的状況
- 学業成績、到達度評価の結果
- 健康情報、障害の有無
- 心理相談の内容、いじめ関連の記録
- 連絡先、住所
教職員に関する個人情報:
- 氏名、職員番号、連絡先
- 人事記録、給与情報
- 教員評価の結果
機微情報はより厳格に
個人情報保護法は、健康、性的指向、宗教、政治的見解などの「機微情報」に対して、より高い水準の保護基準を求めています。学生の家庭環境や心理相談の内容は、このカテゴリーに該当する場合があります。
AIツールのデータ処理方式を理解する
入力データはどこへ行くのか
AIツールを使用する際に入力したデータがどのように処理されるかを理解することが重要です。
ChatGPT(OpenAI):
- 無料・有料ユーザーの会話内容は、基本的にモデルの学習に活用される可能性があります
- 「データ学習除外」設定(Settings → Data Controls)を有効にすると、会話内容が学習に使用されなくなります
- ChatGPT Team、Enterpriseプランはデータ学習から除外されます
NotebookLM(Google):
- Googleの一般的な個人情報処理方針が適用されます
- Google Workspace for Educationアカウントを使用すると、別途の教育用データ保護ポリシーが適用されます
- 個人のGoogleアカウントで使用する場合は、Googleサービス利用規約に従います
Gemini(Google):
- 基本的にGoogleアカウントに連動して会話内容が保存されます
- 「Geminiアプリのアクティビティ」機能をオフにすると、会話内容がアカウントに保存されなくなります
サーバーの所在地と法令の適用
ほとんどのAIツールは米国のサーバーを使用しています。個人情報保護法は国内で収集・処理する個人情報に適用されますが、海外のサーバーに転送する際は「国外移転」に関する規定が適用されます。学校として学生の情報を海外のAIサービスに入力することは、法的検討が必要な領域です。
安全な使用のための5つの原則
原則1:非識別化してから入力する
個人情報が含まれる内容をAIに入力しなければならない場合は、必ず非識別化処理を行ってから入力してください。
- 氏名 → 匿名コード(生徒A、生徒B)
- 学校名 → 削除または「K高校」
- 学籍番号・学級 → 削除
- 具体的な出来事の内容 → パターンの説明として一般化
原則2:最小情報の原則
目的達成に必要な最小限の情報のみを入力してください。「この生徒の学校不適応のパターンを分析して」という依頼をする際に、生徒の家庭環境の詳細情報まで入力する必要はありません。
原則3:データ学習除外設定を有効にする
使用しているAIツールの設定で、会話内容を学習データとして使用しないオプションを探して有効にしてください。ほとんどの主要AIサービスにはこの設定があります。
原則4:業務用アカウントと個人アカウントを分ける
学校業務にAIを使用する際は、可能であれば学校のGoogle Workspaceアカウントや業務用Microsoftアカウントを使用してください。個人アカウントよりデータ保護ポリシーがより厳格に適用されます。
原則5:生成された成果物を配布前に確認する
AIが生成した文書に個人情報が含まれていないかを、配布前に必ず確認してください。AIが入力内容から個人情報を再構成して出力に含める場合があります。
ツール別の個人情報設定の確認方法
ChatGPTの設定
- ChatGPT右上のアカウントアイコンをクリック
- Settings → Data Controls
- 「Improve the model for everyone」のトグルをオフ
- 以前の会話内容の削除:「Delete all chats」を活用
Geminiの設定
- Geminiアプリで設定メニューに入る
- 「Geminiアプリのアクティビティ」→ オフにするか自動削除期間を設定
- すでに保存されている会話内容は「アクティビティの削除」で除去
NotebookLMの設定
NotebookLMはGoogleアカウントに連動しています。
- Googleアカウント設定 → データとプライバシー
- NotebookLM関連のアプリ権限を確認
- 機微な内容を含むノートブックは使用後の削除を検討
学生と教職員のためのAI使用ガイドライン
学生への案内事項
学生がAIを使用する際に守るべき事項を案内してください。
- 自分または他人の氏名、連絡先をAIに入力しない
- 友人や家族に関する個人的な情報をAIに尋ねたり入力したりしない
- AIが生成した個人情報に関連する内容をSNSにそのまま共有しない
- AIの使用履歴は学校のポリシーに従って記録したり教師と共有したりすることがある
教職員チェックリスト
学校として教職員に共有できるAI使用チェックリストです。
- 業務用AIを使用する際は学校のメールアカウントを使用する
- 学生の氏名・学籍番号が含まれる内容の入力を禁止する
- 成績、相談記録などの機微情報の入力を禁止する
- データ学習除外設定の確認
- AI生成の成果物を配布前に個人情報が含まれていないか確認する
- 疑問がある場合は情報保護担当者に問い合わせる
学校ポリシー策定の推奨
学校としてAIツール使用に関する明示的なポリシーがない場合は、策定を提案してください。ポリシーには以下を含める必要があります。
- 承認されたAIツールのリスト
- 個人情報入力禁止事項
- 違反時の対応手続き
- 教職員研修計画
AIツールは教育現場で強力なツールですが、正しい使用ルールなしには学生や教職員の個人情報が危険にさらされる可能性があります。利便性とセキュリティを両立させることが、AI時代の教師に求められる新たな能力です。ルールが複雑に見えても、核心はシンプルです。「氏名や本人を特定できる情報はAIに入力しない。」
皆さんの学校にはAIツール使用に関する明示的なガイドラインはありますか?ない場合、どのような内容を含めるべきだと思いますか?コメントで意見を共有してください。
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