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世界で2億7300万人が学校に通えない — 2026年UNESCO GEMレポートが明かす教育の危機
学校に通うことを当然と思っている人には、この数字が衝撃的に感じられるかもしれない。2億7300万人。 これが今この瞬間、世界中で学校に通えていない子ども・青少年・若者の数だ。2026年3月にユネスコが発表したグローバル教育モニタリング(GEM)レポートは、この数字を提示するとともに、その背景にある複雑な構造を詳細に分析した。
目次
- 後退する教育アクセス — 7年連続の増加
- なぜ再び増えているのか
- 成功した国々の共通点
- 公平性のない教育財政
- 2030年までのカウントダウン
1. 後退する教育アクセス — 7年連続の増加
2000年代初頭、世界は教育分野で目覚ましい成果を上げた。初・中等教育の就学率は30%増加し、不就学の子ども・青少年の数は2000年から2015年の間に33%も減少した。「2030年までにすべての子どもに質の高い教育を」という目標が現実的に見えた時代だった。
しかしその流れが逆転した。不就学人口は今や7年連続で増加し、2024年時点で2億7300万人に達している。これは世界の子ども・青少年6人に1人の割合だ。報告書はさらに、紛争の影響を最も受けた10か国のデータの空白を補正すると、実際の数字はこれより1300万人多い可能性があると指摘している。
2. なぜ再び増えているのか
直感的には、世界が豊かになるほど学校に通う子どもも増えるはずだ。なぜ逆の方向に進んでいるのか。
理由は複合的だ。まず、気候危機と紛争の増加が教育インフラを直接破壊している。学校が洪水に見舞われたり攻撃を受けたりすると、その場で教育は止まる。また、低所得国においてはCOVID-19による休校の影響が予想以上に長く続いているという分析もある。
次に、人口増加が教育供給を上回っている地域がサハラ以南のアフリカを中心に広がっている。学校の建設速度より生まれる子どもの数が速く増えれば、就学率が上がっても不就学者の絶対数は増加する。
そして経済的不平等の深化が重要な変数だ。家庭の収入が下がると、学校を辞めて働きに出る子どもが生まれる。特に女子は、家庭の経済状況が悪化した際に最初に教育機会を奪われる傾向が強い。
3. 成功した国々の共通点
報告書は危機だけを語るわけではない。困難な条件の中でも教育アクセスを大きく向上させた国々の事例を詳しく分析している。
2000年以降、不就学率を80%以上削減した国として、子どもの段階ではマダガスカルとトーゴ、青少年段階ではモロッコとベトナム、若者段階ではジョージアとトルコが挙げられた。これらの国の共通点は、単に学校を多く建設したことではなく、最も脆弱な層に教育資源が最初に届くよう制度を設計したことだ。
一方で、教育予算が十分でも、その資金がすでに就学している生徒にのみ集中するなら、格差は縮まらない。報告書はこれを測定するために**公平性財政指数(EFI)**という新たな指標を導入した。
4. 公平性のない教育財政
EFIは、ある国の教育財政が実際にどれだけ不利な立場の学習者を支援しているかを測定するツールだ。分析結果は衝撃的だった。教育財政の公平性指向が十分に強い国は、全体の10か国に1か国にも満たなかった。 ほとんどの国で教育予算は既に就学している生徒の質を向上させることに集中し、まだ学校の外にいる子どもたちには十分に届いていない。
法的側面では進展があった。障害のある子どもへのインクルーシブ教育を法律に明記した国の割合は2000年の1%から24%に上昇し、法的にインクルーシブ教育環境を義務化した国も17%から29%に増えた。しかし報告書は、法律と現場の実態の間には依然として大きな隔たりがあると強調している。
5. 2030年までのカウントダウン
ユネスコの2026 GEMレポートは「2030カウントダウン」シリーズの第1弾だ。2026年は教育アクセスと公平性、2027年は教育の質と学習成果、2028〜2029年は教育の適切性と将来との関連性を扱う予定だ。
現在のペースでは2030年の目標達成は遠い。しかし報告書は可能性をまだ語っている。ただし条件がある。「まだ学校にいない子どもたち」を優先する方向に、教育財政と政策が構造的に再編されなければならないということだ。
学校に通うことを当然と思う社会では、その当然が届かない場所の話を忘れないことが、このレポートが伝える最も根本的なメッセージだ。
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出典
- UNESCO (2026). 2026 Global Education Monitoring Report: Access and Equity. https://www.unesco.org/gem-report/en/publication/equity-and-access
- UNESCO (2026). UNESCO Launches 2026 Global Education Monitoring (GEM) Report on Access and Equity. https://www.unesco.org/en/articles/unesco-launches-2026-global-education-monitoring-gem-report-access-and-equity
- World Education Blog (2026). The 2026 GEM Report calls for a focus on equity to improve access to education. https://world-education-blog.org/2026/03/25/the-2026-gem-report-calls-for-a-focus-on-equity-to-improve-access-to-education/
- InterAcademies Partnership (2026). New UNESCO report calls for urgent action on equity and access in education. https://www.interacademies.org/news/new-unesco-report-calls-urgent-action-equity-and-access-education